僕の脳裏と電子日記

文章にしたくなった事を残す場として此処を設けました。

Lo-Fi

僕は昨日ヘッドフォンを失くした。確か1万かそこらのそれなりに良いヘッドフォンだった。元々かなりボロボロであった部分もあってそろそろ買い換えようとは思っていたので、あまりダメージはないのだが、しかし僕は基本的に音楽を聴いていないと生きていけないいわば「音楽的サメ」であるので、ヘッドフォンを失くしたからといって全く音楽を聞かず登下校をするのは不可能に近く、結局朝の忙しい時間を惜しみなく費やして自室から安い通話用のイヤホンを見つけ出した。100円かそこらの、恐らくイヤホン界で一番安いものだ。

 

いつもと同じ曲をかけた。彼の声はいつもより遠く聴こえた。やはり安いイヤホンはこの程度かと少し憂鬱になった。

が、その時ふと思いついてthe mirrazの「うるせー」を聴いてみた。音割れし放題のギターサウンドに突き刺すような歌声。もちろん普段聴いているそれとは全く別物に聴こえたが、何故か悪い気持ちはしなかった。

続けて自分の感性に従って曲を選んでかけてみた。

愛はズボーンの「アナコンダ」、Limp Bizkitの「Nookie」、藍坊主の「テールランプ」と来て、プププランドの「ヘイガール、涙を拭いて」を聴いたとき、僕はこう思ってしまった。

 

「なんだ、こっちの方がカッコイイじゃん。」

 

もちろんヘッドフォンで聴くより"音質"が良い事は決してない。ただ、今耳に入ってくる割れたギターミュージックが僕には最高に刺激的で、ロックに聴こえたのだ。

 

この世の中にはローファイ・ミュージックと言う音楽ジャンルが存在する。1990年代、当時の「いかに良い機材でいかにいい音を出して録音するか」という風潮に対してアンダーグラウンドで成長した、わざと安っぽい機材を使ってノイジーに奏でる音楽だ。そこで生み出された考えや作品は、今のロックシーンにも影響を与えている。

安いから悪い、高いから良いみたいな感覚は非常に短絡的だと僕は思っている。イヤホンにしてもファッションにしても、学歴にしても仕事にしても、それらの価値は一元的にではなくいくつもの一次独立な要素が合わさってその価値を成しているはずだ。世の中には完全上位互換など存在しない。全てのものには得意不得意があり、それらを理解した上でうまく使いこなす事が僕らの知恵なのではないだろうか。