僕の脳裏と電子日記

文章にしたくなった事を残す場として此処を設けました。

フロンティア


f:id:kleinschvierergruppe:20190419161944j:image

 

これは3月28日、奈良県の曽爾高原で撮った写真です。手前の2人は僕の友達で、この日は僕含め3人で「ハイキングをしよう」と集まりました。

朝7時集合。眠気眼のまま電車に揺られ1時間、一旦三重に入り、名張からバスで40分かけ奈良県に戻りつつ曽爾村の太良路まで行きました。歩道は無く、車道が実質の歩道で、曽爾高原までは後4km。3人それぞれがそれぞれのペースで歩きました。

朝10時半。早朝の揚々とした感覚が薄れてきていた頃、僕らの目の前に現れたのは大きな芒の野原でした。丁度山焼きの時期で絶妙に暗い色の、でも底に秋の黄金を残したような美しい高原が広がっていました。早速僕らはその楽園の中へ飛び込んでいきました。

然の家の近くで遊ぶ子供達の笑い声を傍耳に、近くの亀山から尾根道へ抜けようと3人で計画しました。その時僕らの視界には亀山と、尾根道が丸々収まっていました。

「このくらいなら行けるだろう」と思っていました。

が、そうは問屋が卸しませんでした。

亀山に差し掛かるのにまず20分。そこからひたすら登る。登る。登る。

頂上につく頃にはあの元気な子供たちの声も蚊が鳴くように聞こえ、大きな池は水たまりのように、尾根道から麓に続く大きな階段道は太さを持たない曲線のように見えました。

これが山の規模感かと、実際に登ってみて初めて気付きました。

数字にすればその行程はせいぜい3,4kmです。しかしかかった時間や目に飛び込んできた景色も合わせて、僕の体感はそれより遥かに長いものでした。自然の大きさ、広さ、偉大さは、数字で分かるものではなく、自分自身がその最前線「フロンティア」に飛び込んで実際にそこを踏みしめ開拓するまで分からないのだと気付きました。

 

しかし、その大きさや驚きをそこに居ない誰かに伝えようとするのが写真家の義務です。

亀山からさらに歩くとき、僕は先に歩く2人から引き、尾根道と共に写しました。地学研究者が地層の写真を撮るときにピッケルを添えるように、そこに我々人間という比較対象を置き、威厳ある自然と小さな人間の対比を捉えました。

僕はこれからも新たな驚きを求めてフロンティアへ踏み出します。この写真を見て、偉大なる自然に飛び込んでいく同士が増えることを祈っています。